はるまきパタパタ

料理とDIYについて色々書きます。

低温調理の温度のホントの所

低温調理のどこまで知っていますか?

一番最初に言っときますが、低温調理で53℃以下はどうかんばってもアウトです。
菌を培養して食べてるのに近いので、やめましょう。


低温調理、流行っていますね。去年もですが、今年も色んな所から低温調理の話が聞こえてきます。
いろいろな料理系のWeb記事で低温調理の方法とか魅力が紹介されていて、低温調理好きとしては嬉しい限りです。
ただそれらの記事は、低温調理のやり方だけ書かれていて、肝心の殺菌のことについて触れている事が少ないので、いろいろと危惧しています。

45度で一時間とか…。それ、雑菌とか食中毒原因菌を増やしてる可能性ありますよ。
自分で食べるなら止めませんけど、わざわざ危ないことしなくてもいいですよ。

今回は、低温調理で重要な殺菌について再度説明したいと思います。
低すぎる温度で加熱して、腹を壊さないように限界温度の理解の助けになればと思います。

なぜ殺菌が必要なのか

ズバリ、食中毒になるからです。

自然界には至る所に菌が生息しています。
もちろん普段口にする食品にも付着しています。

大体の菌は、胃酸や免疫で無害化されます。
しかし、もともとの数が多かったり強いやつがいた場合、人間の抵抗力を超えて感染します。

なので、食品中の有害な菌類を加熱によって無害な数まで低下させなければなりません。
これが殺菌が必要な理由です。

基本の殺菌

方法は色々ありますが、料理では加熱殺菌が一番使われます。
菌も生き物ですから、加熱するとタンパク質が変性したり酵素が失活したりして、死にます。

菌が原因の食中毒の予防には75℃1分以上の加熱が、ウイルス性の食中毒の予防には85℃1分以上の加熱が必要とされています。これが加熱殺菌の基本です。

でも、低温調理ではここまで加熱できません。
詳しい理由は以下を読んでもらいたいですが、せいぜい66℃の加熱までです。
harumaki-flipflop.hatenablog.com

低温殺菌

低温調理では基本の加熱を行えませんが、殺菌は可能です。

人間を例に考えてみましょう。あなたは、42℃のお風呂に何分入れますか?
10分程度なら入ることはできるでしょうけど、1時間入っていたらどうなるでしょうか?10人いたら8人ぐらいは倒れそうです。

では2時間なら?3時間なら?

菌も同じで、短い時間は耐えられるけど長時間は耐えられない温度で、長時間加熱してあげると殺菌が可能です。
低温調理では、こんな感じで温度と時間を管理して殺菌します。

菌にとっての適温の危険性

低温調理の際に、温度を下げすぎると殺菌どころか菌を培養する事になります。

まず、菌にとっての最適温度は結構幅広いので、53℃付近までは増殖と生存を続けます。
53℃以下はどうかんばってもアウトです。殺菌できません。

人間の体温付近が一番やばいです。居心地いいので、バンバン増えます。
45℃で一時間とか、加熱しちゃダメです。54℃以上での加熱が必須です。

加熱の時間と温度

さて、低温殺菌に必要な加熱温度時間ですが、これも菌の種類に依存します。
とてもじゃないですが、調査しきれません。

ということで、ここからは権威に頼りましょう。
日本と米国の食品基準を見てみます。ここに最低限必要な加熱時間が書いてあります。

注意事項です。両方の基準で共通することは、以下の二点です。

  • 殺菌対象全体がその温度で維持されている時間を表記している。
  • 肉塊のまま加熱する必要がある。

前者は、冷たい肉と温かい肉、大きい固まりと小さい塊で必要な加熱時間が違うよということを言っています。
後者は、挽肉とかスライスした肉は対象外(規格外)だよということを言っています。

温度と時間については多少の差があるものの、だいたい一緒です。
米国基準の方が低めの温度での加熱時間が短いです。どちらを信用してもいいと思います。

日本における基準

日本の食品関係で偉いところは、厚生労働省です。

ここでは厚生労働省が出している食品衛生法関連の「食品、添加物等の規格基準」というものに、基準となる加熱時間が載っています。
www.mhlw.go.jp

この規格基準と言うのは、「食品を作るときは、こういう基準で調理してね」というガイドラインみたいなものです。
食品別に基準が分類されていて、「食肉製品」のうち、「特定加熱食肉製品」の項目を参照します。

これが低温調理した肉に適した分類です。読み進めていくと、下記のような記述があります。


製品は、肉塊のままで、その中心部を次の表の第1欄に掲げる温度の区分に応じ、同表の第2欄に掲げる時間加熱し、又はこれと同等以上の効力を有する方法により殺菌しなければならない。

第1欄 第2欄
55° 97分
56° 64分
57° 43分
58° 28分
59° 19分
60° 12分
61° 9分
62° 6分
63° 瞬時

米国の食品基準

アメリカの食品基準を見てみましょう。
アメリカの食品関係で偉いところは、FDA(Food and Drug Administration)です。

で、「Food Code」という食品衛生基準があります。
www.fda.gov

4年毎に更新されているみたいですが、まだ更新されていなかったので、Food Code2013を参照してみます。

やたらでかくて長いPDFなので、読むのが大変ですが、必要なのは、Chapter 3-401.11です。
日本のと同じような表が載っていますね。転載するとこうです。


As specified in the following chart, to heat all parts of the FOOD to a temperature and for the holding time that corresponds to that temperature:

Temperature°C (°F) Time
54.4 (130) 112m
55.0 (131) 89m
56.1 (133) 56m
57.2 (135) 36m
57.8 (136) 28m
58.9 (138) 18m
60.0 (140) 12m
61.1 (142) 8m
62.2 (144) 5m
62.8 (145) 4m
63.9 (147) 134s
65.0 (149) 85s
66.1 (151) 54s
67.2 (153) 34s
68.3 (155) 22s
69.4 (157) 14s
70.0 (158) 0s

まとめ

53℃以下はどうかんばってもアウトです。

食品基準にも54.5℃以下は乗っていないことがわかりました。
54.5℃ならば、(予熱時間を除き)2時間以上加熱すれば良さそうという裏付けも取れました。

時間がかかりすぎるので、冒険したくない場合は、2℃ぐらい設定温度上げといてもいいと思います。
測定誤差・機器誤差もあるので。

危険な温度を避けて、安全な低温調理ライフを楽しみましょう。

こちらもよろしくおねがいします

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